タカの語り箱

余計なお世話と知りつつも、大学入試ど田舎の戦略、子育て、その他、日々思う事を書いています

田舎でスポーツを頑張る子ども達へ 『勉強して強豪校以外の選択肢を増やそう!』

最近、あるサッカーの強豪校の指導者による暴力や抑圧的な言葉が、SNSで拡散され話題になっています。
こういう問題は、風通しの悪い集団において、よく起こりうる問題だと思います。
田舎でスポーツを頑張る子ども達の中には、強豪校への進学を目指す人も多いのではないでしょうか。
今回は、田舎でスポーツに励む子どもに寄り添ってきた経験から、スポーツ強豪校に進学することについて私見を語ります。

 

強豪校進学って実際はどうなんだろう?

私の住む離島ではスポーツを頑張る子どもが多く、高校で強豪校に進学する子供もいます。

息子のサッカーチームからも、先輩や同級生、後輩が何人も強豪校へ進学して行きました。

「強豪校へ行ったのだから、彼らはさぞかし充実した高校生活を送っているのだろう」

と思いきや、聞こえてくるのは首を傾げる噂ばかり...

例えば、

✓ 怪我をしたら、「走り込んで治せ」と言われる

✓ 怪我をしても、次の試合から出場できなくなるのが怖くて、指導者に言えず悪化させてしまう

✓ 試合でミスをすると怒鳴られるため無難なプレイしかできなくなる

✓ テレビ局の取材では、「練習時間90分で密度の濃い効率的な練習をしている」とアピールしていたのに実際は長い時間練習をしている(嘘を言っている)

どれも全国大会常連校の話です。

果たして、高校で強豪校に進学することが子どもにとって良いことなのか、ずっと疑問に思っていました。


離島に住んで感じた感動と違和感


毎年3月の末になると島の港は見送りの人々で大賑わい。

高校進学で島を離れる子どものためにも、同級生や後輩達が大勢集まります。

彼らは「エイサッサ」という日本体育大学の応援スタイルを披露します。その「エイサッサ」が見送りの儀式なのです。(現在はコロナウイルスの影響で行われていない可能性があります)

多い時には50人~100人ほど集まり、夜の港に太鼓や掛け声が響き渡る圧巻の演舞。

15歳で親元を離れ旅立つ仲間への最高のエールです。

私は始めて見た時、島で一緒に育った仲間を思う気持ちに感動して涙が出ました。

しかし、私にはこの見送りの光景に対する違和感もあります。

この盛大な儀式を見ている後輩達には、出発する先輩の姿が眩しく輝いて見えるはず...

「強豪校に進み、こうやって盛大に見送られたい」

こう思う後輩達もいるのではないか...

島には「本土で活躍することがステイタスだ」と考える子どもがいるのも事実です。

でも私には強豪校に対する不信感があり、毎年毎年同じ様に送り出される子ども達が心配になります。

「たとえ夢破れたとしても不貞腐れず、最後まで希望を持って次の夢へと繋いでほしい。」

これから出発する子ども達に対し、ちょっとネガティブに考えてしまう。

どうしても「あなた達なら活躍できる。頑張れ」というポジティブな思いが湧いてこないのです。

表向きではポジティブな言葉をかけたとしても本心は心配と違和感。

親の立場だから、そう思うのかもそれません。


強豪校の厳しさー小さな池の大きな魚効果


スポーツ強豪校は、全国からその競技種目における優秀な生徒をスカウトまたはテストを行い集めます。

スポーツ強豪校への進学は、大変な覚悟が必要です。

優秀な選手達の中で競争に勝てず、思うように力を発揮できないことも起こるからです。

小さな池の大きな魚効果」という心理学用語があります。

これは、”個人の学業レベルが同程度である場合、所属している学校の学業レベルの高低が個人の有能感に影響を与える現象のこと”をいいます。(引用元Wikipedia)

要するに高すぎる学力レベルの集団に入ることで有能感が薄れ、その後伸び悩むケースのことです。自己肯定感が下がってしまうのでしょう。

スポーツ強豪校に進学した生徒も、この「小さな池の大きな魚効果」のように力を伸ばせず苦しむ可能性もあるのです。

また地方出身ならば、ほとんどが寮生活となり、学校や練習の後も、先生や先輩との上下関係、寮のルール等に縛られます。

今、問題となっている暴力事件は、部外者には分からない寮での出来事でした。

風通しの悪い閉ざされた集団の場合、このような事件は、よく起こりうる問題だと理解しておく必要があります。

部活動に関する問題の多くは、試合に勝たなければならない『勝利至上主義』に原因があるのではないでしょうか

多くのスポーツ強豪校の部活動では、試合で良い成績を収めることで学校の名を揚げます。そして沢山の生徒を集め学校経営に貢献しているのです。

もしもスポーツ強豪校へ進学を検討しているならば、個人の成長に真剣に向き合っている指導なのか、出来る限り細部まで調査することをお勧めします。


大事な高校年代

私が子育てにおいて参考にしてきた「シュタイナー教育」では、14~21歳は思考力を育む時期だと説いています。

様々な現象に対し自分で考え、思考を発展させていく。そして自分で答えをみつけていく。

いわゆる論理的思考力をこの時期に育て、責任ある自由な人生を切り開いていく礎とするのです。

またこの時期は、親や教師、世の中に対して反感を持つこともあります。それが正常。

権威や社会に対して疑問や反感を持ち、自分で意思決定できる大人へと近づいていきます。

そのような時期に部活動の指導者が、生徒の考えや反感を過度に押さえつけてしまうのは、精神の発達において問題があるのではないでしょうか。

また、身体的な発達についても、成長期である高校年代の過度な疲労は、怪我を招き、選手生命を短くしてしまう可能性があります。

そんな大事な時期に勝利至上主義の部活動に入ってしまったら・・・

しかも寮生活だったら・・・

「打たれ強くなる」「我慢強くなる」そんなことは、スポーツに打ち込んでいたら自然と身に付くことです。

高校年代の心身の成長において何が必要か、または必要でないか、よく見極めて志望校を決めましょう。



視野を広げるために勉強して選択肢を増やそう


スポーツだけを頼りにせず、勉強も大切にしていると、将来の選択肢がグッと広がります。

我が家の例で恐縮ですが、学校の勉強とサッカーを両立させていた息子は、中学からヨーロッパのサッカーを研究し始めました。
そのうちにヨーロッパの育成に興味を持ち、島の公立高校に通いながらヨーロッパにサッカー留学。

この経験から将来の目標が明確となり進路を決定しました。

もしも強豪校へ進学していたら、自分の都合で留学したり、懸命に勉強したりすることは出来なかったでしょう。

勉強を大切にする事で、スポーツだけに集中するよりも視野が広がります。

例えば 
✓ 英語で書かれている海外の有名選手の記事を読む
✓ 英語を使ってスポーツ留学
✓ 数学や物理を使ってチームや個人の分析
✓ 生物や保健体育を使って怪我や病気の処置や治癒のしくみを学ぶ
✓ 家庭科や生物を使って栄養の取り入れ方をを学ぶ

スポーツと結びつく科目は沢山ありますね。それらの研究を続け、大学入試に生かすことも出来ます。

視野が広がると将来の選択肢が増え、スポーツ選手または選手以外でも、より高いレベルの人材を目指せる可能性があるのではないでしょうか。


育成年代の過度なスパルタやおかしな指導にNO!


過度な抑圧的指導で辛い思いをしている子どもや保護者は、声をあげた方が良いことは明確です。

しかし、声を上げると試合の際にメンバーから外される。

また保護者も、寮生活の子どもが人質にとられている感覚になっている。

結局、何も言えずに苦しんでいる生徒と保護者は多いのでしょう。

おかしな指導には反論しなければ、指導者も問題だと気づかない可能性があります。

指導者も人間です。元々は高い志を持って指導者になったはず。

閉ざされた世界の中で、勝利至上主義によるプレッシャーや自分の権威性を過信し過ぎることで、判断が歪んでしまったのでしょう。

スポーツを頑張る子ども達が、抑圧的指導の学校に進学しないことでNOを示せば、その指導に変化が現れるかもしれません。


スポーツでの進学で後悔しないように、部活動の評価システムを導入しWEBで公開を!


Jリーグの育成部門は、2015年に「フットパス」という育成評価システムを導入しました。

このシステムは、ベルギーで開発され、ドイツのブンデスリーガで広く採用されたことから有名になったシステムです。

Jリーグでは、このフットパスを用い、アカデミーの育成を多角的に評価し数値化しています。

高校の部活動も、このような評価システムを作り、WEBで公開するべきです。

そうすれば、戦績だけではなく、指導の中身で生徒を集められる仕組みに改革できます。

私の息子の出身高校は、野球部が有名です。

甲子園にも出場したので、離島にありながら強豪校といえます。

この野球部の指導は「エンジョイング ベースボール

強豪校にもかかわらず、楽しそうに野球をしています。息子がよく「監督が一番楽しそう」と言っていました。

また、息子の出身高校では、数年前に広島から畑喜美夫先生を迎え、『自ら考え積極的に行動する、ボトムアップ理論』の研修を行い、部活指導の向上に努めていた印象があります。

ボトムアップ理論とは、畑喜美夫先生が考案した生徒を主役としたチーム運営を行う指導方法です。

生徒が、練習メニュー、公式戦メンバー、戦術、選手交代等全てを決定し、指導者は、必要に応じて問題提起をしながら生徒の可能性を引き出す役として存在します

最近、東京のあるサッカー強豪校がこの指導方法を実践しているとニュースで読みました。

論理的思考を育むべき高校年代にこのような素晴らしい指導を受ける生徒は幸せですね。

今後、スポーツを頑張る子ども達が、志望校についてしっかりと調査した上で入学し、悔いの無い高校生活を送れることを切に願っています。

ここまで読んで下さりありがとうございました。



参考 Jクラブのアカデミーを世界基準で査定すると?育成評価システム「フットパス」が指摘した"日本的"組織の問題(https://coachunited.jp)

質を上げ生徒の考える力で勝負する!畑喜美夫・ボトムアップ理論の概要と実践【DVD全2巻】説明文より